政権交代後、「原発ゼロ」目標はどうなったの?

    2014年4月、安倍政権は新たなエネルギー政策を閣議決定しました。
    原発を「重要なベースロード電源」と位置づけて今後も活用する方針で、
    「原発ゼロ」目標は取り下げられ、原発の新設・増設を否定しませんでした。
    あいまいながらも「原発ゼロ」を目指した野田政権下のエネルギー政策は、
    安倍政権によって「原発活用」へと大きく方針転換されました。

安倍政権による原発ゼロ政策の見直し

2012年12月16日の衆議院選挙で民主党は敗北。
大きく議席数をのばした自民党が、公明党と共に政権復帰を果たします。

安倍政権がスタートすると、
民主党政権下の原発政策を見直す発言が相次ぎました。

民主党政権が掲げた二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするという方針は、具体的な根拠を残念ながら伴っていないものでありまして、ゼロベースで見直しをして、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築をしていかなければなりません
(2013年4月22日、参議院予算委員会での安倍首相の答弁より引用)

安倍政権は政策の方針転換に向けて、
経産省におかれたエネルギー政策を話し合う委員会の人選を変更しました。

民主党政権下では、脱原発派の委員が全体の3分の1ほどを占めていましたが、
新たなメンバー15人の中で「原発ゼロ」を主張するのは2人ほどにすぎないと報じられています。

そして、この委員会での議論をベースに政府・与党の調整を経て、
2014年4月11日に新しいエネルギー政策が閣議決定されました。
※国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)で保存されたエネルギー基本計画のPDF資料がご覧いただけます。

エネルギー基本計画、脱原発から原発活用に方針転換

原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけたエネルギー基本計画。
特に重要な変更ポイントは以下の3点です。

  1. 「原発ゼロ」目標を取り下げ
  2. 原発の新設・増設を否定せず
  3. 終了するとしていた「もんじゅ」を延命
「原発ゼロ」目標を取り下げ

2012年の「革新的エネルギー・環境戦略」では、
「2030年代の原発稼働ゼロを目指す」とされていました。

エネルギー基本計画では、以下のように記載されています。

原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電 所の効率化などにより、可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国の今後 のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、確保していく規模を見極める。

「原発依存度は可能な限り低減」するとしつつも、
「確保していく規模を見極める」として原発の比率は示されませんでした。
原発ゼロ目標は取り下げられ、今後も原発を活用していく方針です。

原発の新設・増設を否定せず

2012年の「革新的エネルギー・環境戦略」では、
「原発の新設・増設は行わない」ことが原則として掲げられていました。

今回は、上記のように「原発を確保する規模を見極める」として、
原発を今後新たに作るのかどうか、将来に含みをもたせています。

終了するとしていた「もんじゅ」を延命

エネルギー基本計画では、核燃料サイクル政策について「推進」方針を示しています。

使用済燃料の処分に関する課題を解決し、将来世代のリスクや負担を軽減するためにも、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や、資源の有効利用等に資する核燃料サイクルについて、これまでの経緯等も十分に考慮し、引き続き関係 自治体や国際社会の理解を得つつ取り組むこととし、再処理やプルサーマル等を推進する。

そして核燃料サイクル政策の柱である「もんじゅ」については、

もんじゅについては、廃棄物の減容・有害度の低減や核不拡散関連技術等の向 上のための国際的な研究拠点と位置付け、これまでの取組の反省や検証を踏まえ、 あらゆる面において徹底的な改革を行い、もんじゅ研究計画に示された研究の成 果を取りまとめることを目指し、そのため実施体制の再整備や新規制基準への対応など克服しなければならない課題について、国の責任の下、十分な対応を進める。

2012年の「革新的エネルギー・環境戦略」では、
「年限を区切った研究の成果を確認して終了」する方針でしたが、延命されることになりました。

あいまいながらも原発ゼロ目標を掲げた野田政権の方針は、大きく転換されました。